蒼い海の記憶
梅雨の嵐の合間、鳥羽へクルーズ&ランにでかけた。
荒れた海だった。
波はゆうにマストの高さに近く、山の合間にいるようだった。
谷間から小高い山のような波の頂上に登ると、そこでは波は飛沫をあげて飛び散り
ヨットは大きく傾いた。
風の音は、空気を切り裂くような、叫びにも似て・・・・。
波の波長と、風の息吹きのタイミングを、ぼくは五感で睨んでいた。
自然に、畏怖を感じた。
その感覚は、いつか、覚えのあるものだ。
それは海だったか、山だったか・・・。
対峙するそれに、人格のようなものを感じ、向き合わず目をそらした瞬間に
相手は自分を飲み込むのだと、なぜか知っていた。
緊張は緊迫に、そしてあるレベルをこえて、いつしかそれと同化してゆく。
もう、怖くはない。
ぼくはそこで、自然に振る舞えばよいのだ。
頭で考えず、魂が叫ぶ通りに・・・・。
嵐の海をこえたさきには、静かな夕暮れが待っていた。
驚くほどすばやく、風はどこかへ消えた。
一気に疲れを思い出した。
さきほどまみれた、あの海峡を振り返った。
夕暮れの空の「蒼」は海に映り、世界すべてを染めた。
今日にふさわしい色だ・・・そう思った。
ちゃんと覚えておこう・・・そう思った。
by hwindlife | 2010-06-21 22:52 | ヨット